精神の自立
ある物語を読了しました。
その物語に登場する人物たちは、皆それぞれにつらい思いを抱えていて、様々な感情を持ちながら、ときにお互いを傷つけ合っていました。
主人公だけでなく、他の人物たちも、物語の最初と最後で状況が大きく変わることはありません。
たとえば、愛してもらえない誰かに愛されるようになったり、見てほしい人に見てもらえるようになったり。そうしたことは、ひとつも起こらないのです。
ただひとり、キーパーソンとなる存在が物語に現れ、そして去っていきます。
状況そのものはまったく変わらないのに、その存在が登場人物たちの心に大きな影響を与えていくのです。
物語のなかで、それぞれの人物が少しずつ、ある種の「精神の自立」のようなものを獲得していきます。
私は、たとえどんなに悪い状況だったとしても、人はその状況を受け入れることができるのだと思っています。けれども、自己のバランスを失ってまで、受け入れることはまたつらい状況を繰り返す力を生んでしまう…
だから、その過程で必要なのは、「ありのままの自分を許せるようになること」。
そして、それが可能になるためには、誰かが側にいてくれることが、やはり必要なのだと思わされます。
なぜか、この物語を読みながら、映画『キャスト・アウェイ』のことを思い出しました。
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