歩く。
歩み始めるまでは
頭の中で歩むなという理由が
ぐるぐるとまわります。
歩むなと彼らに説得されながら
部屋の中に閉じこもって
動けなくなってしまいます。
それもしかたのないこと。
彼らはちゃんと引き留めておきたい。
いつかその網をかいくぐって
歩き始める。
その理由なんてなんでもいい。
お腹が減ったから。
誰かのところへ行きたいから。
少し言葉を交わしたいから。
ただ夜の道路を歩いたり
ただ昼間に川辺で水を見つめたり
そんな時間のなかに
とても意味のある瞬間があります。
あなたの日々が映される
街の風景や誰かの声が
あなたのこころに残っていく時
誰かもそのことを憶えています。